お役立ちコラム
古民家リノベーションの空調工事で気をつけたいこと──風情を損なわない設置のポイント

古民家をリノベーションして住まいや店舗、宿泊施設として活用するケースが増えています。梁や土壁、格子といった古き良き佇まいを残しながら暮らす魅力がある一方で、現代の生活に欠かせない空調設備をどう設置するかは、多くの方が悩むポイントです。
古民家は、そもそもエアコンの設置を想定して建てられていません。この記事では、古民家に空調設備を導入する際に押さえておきたいポイントを、機器選定・配管・室外機の3つの観点から整理します。
古民家に空調設備を設置する難しさ
現代の住宅は、設計段階でエアコンの設置場所や配管ルート、電源の位置があらかじめ決められています。しかし古民家は、建てられた当時、空調機器の存在自体が想定されていません。そのため、リノベーションで空調を導入する際には、以下のような課題に直面します。
- 配管を通すルートがそもそも存在しない
- 壁や柱の構造上、配管穴を開けられる場所が限られる
- 電源容量や配線が、現代の空調機器の仕様に対応していないことがある
- 天井が高い、梁が複雑に組まれているなど、機器の設置位置に制約がある
これらは図面だけでは判断できず、実際に現地を確認しながら、建物の構造に応じた設置方法を検討する必要があります。
風情を損なわない機器選定と色使い
古民家の魅力は、梁や柱、土壁、建具といった意匠にあります。空調機器を設置する際は、この雰囲気を壊さないための工夫が欠かせません。
機器本体の色
エアコンの室内機は白が一般的ですが、近年は黒や木目調のカバーが選べる機種も登場しています。梁や柱の色味に合わせて機器の色を選ぶことで、存在感を抑えながら設置することができます。
配管の色とルート
配管カバーも、外壁や建具の色に馴染む色を選ぶことで、目立たせずに仕上げることができます。また、配管をどのルートで通すかによって、見え方は大きく変わります。天井の低い部屋では配管を目立たせない工夫が必要になりますし、天井が高く梁が見える造りの部屋では、あえて配管を露出させつつ、色を合わせることで違和感を抑える方法もあります。
隠蔽配管という選択肢
建物の構造によっては、天井裏や壁の中、軒天のスペースなどを活用して配管を隠す「隠蔽配管」が可能な場合もあります。配管が室内や外壁に露出しないため、意匠性を重視する古民家では有効な選択肢のひとつです。ただし、隠蔽配管は施工の難易度が上がり、対応できる業者も限られるため、事前に相談しておくことをお勧めします。
室外機の設置場所と景観保全
室内側の意匠だけでなく、室外機の見え方も古民家の景観を左右する重要な要素です。室外機をそのまま置くと、どうしても現代的な設備感が際立ってしまいます。
そこで活用されるのが、木製や竹製の格子・囲いです。建屋の一部として馴染むように室外機を囲うことで、設備としての存在感を抑えることができます。
京都の町家では、軒下に設置される「犬矢来(いぬやらい)」と呼ばれる、竹を曲げて作られた低い柵があります。もともとは雨や泥はねから外壁を守るためのものですが、近年ではこの意匠を応用し、室外機や水道メーターの目隠しとして活用される例も見られます。犬矢来以外にも竹・木製格子などを活用する方法もり、これらは古民家や町家らしい佇まいを保ちながら設備を隠す、ひとつの知恵といえます。

部屋・用途別の機器選定
古民家では、部屋の用途や構造によって、適した空調機器のタイプが変わります。
天井カセットタイプ
天井に埋め込むタイプで、室内に機器の存在感を出したくない場合に選ばれます。ただし、天井裏に十分なスペースが必要なため、天井の高さや梁の位置によっては設置が難しいこともあります。
一方で、近年はオフィスや飲食店を中心に、天井材をあえて撤去して梁や躯体を見せ、天井を高く見せるデザインも増えています。もともと天井高のある古民家であれば、この考え方を応用し、天井カセットの吊り込み部分をあえて隠さず、配管や機器の色を空間に合わせて馴染ませることで、古い建物の趣を活かしながら現代的な設備を無理なく共存させることもできます。「隠す」だけでなく「馴染ませて見せる」という選択肢があることも、古民家ならではの機器選定の面白さです。
壁掛けタイプ
最も一般的なタイプで、木目調など意匠性の高いカバーを選べる機種もあります。設置の自由度が高く、古民家でも採用しやすい選択肢です。
天吊りタイプ
天井から吊り下げる形で設置するタイプで、厨房など天井カセットの設置が難しい場所や、油煙・湿気の影響を受けやすい場所で採用されることがあります。一般の居室ではあまり使われませんが、飲食店として活用する古民家では選択肢に入ります。
ビルトインタイプ
壁や天井に機器を埋め込む方式で。古民家への後付けで新たにビルトインタイプを導入することは、建築工事を伴うためコストはかかりますが、見た目として部屋内に室内機が見えないため有効な選択肢となりえます。また、設置後の入れ替え更新の際に天井裏、壁裏に見えている吹き出し口以上の本体が格納されているため、吹き出し口周辺を開口作業が必要となります。

実際の施工事例から
小林設備では、京都府南丹市美山にある古民家リノベーション宿泊施設の空調設備設置を手がけました。この施設では、施設の雰囲気に馴染むマットブラックをベースに、客室には主張を抑えた白の壁掛けタイプを設置。天井の高い部屋では、あえてカセット型を露出で吊り込み、配管も同色でまとめることで、古民家の躯体の邪魔にならないよう仕上げています。また、室外機もそのまま見せず、建屋の一部として馴染むように木製の囲いで覆い、景観への配慮を行いました。
施工事例: 美山の古民家リノベーション総合宿泊施設
まとめ
古民家への空調設置は、単に機器を取り付けるだけでなく、建物の意匠や構造を理解した上で、機器の色・配管ルート・室外機の見せ方まで含めて総合的に検討する必要があります。ポイントを整理すると以下の通りです。
- 配管ルートが存在しないため、現地調査に基づいた設計が必要
- 機器本体・配管カバーの色選びで、建物の雰囲気との調和を図る
- 室外機は木製格子や囲いを活用し、景観を損なわない工夫をする
- 部屋の用途や構造に応じて、天井カセット・壁掛け・天吊りから適切な形式を選ぶ
小林設備では、古民家や町家のリノベーションにおける空調設備の新規設置・入れ替えを数多く手がけております。「古い家に設置できるか不安」「風情を壊さずにエアコンをつけたい」といったご相談も、お気軽に小林設備までお問い合わせください。
